そうだったのか! 現代史 (集英社文庫)

そうだったのか! 現代史 (集英社文庫)

そうだったのか! 現代史パート2 (集英社文庫)

そうだったのか! 現代史パート2 (集英社文庫)

ベトナム戦争アメリカは勝てない」
 私が最初にそう思ったのは、高校生の時でした。
 新聞に掲載された一枚の写真を見たのがきっかけです。 ベトナム戦争が激化していた頃の、ある日のことでした。 
 稲穂が実った田んぼの真ん中を、アメリカ軍の戦車が走っている場面でした。
 稲穂は無残に倒れて、戦車の通った跡がくっきり残っています。
 このアメリカ人たちには、米に対するアジア人の思いは理解できない。私はそう感じたのです。
 アメリカ人にとって、田んぼに広がる稲穂は、ただの草だったのでしょうか。見渡すかぎり平らに広がる草原だったら、戦車で草をなぎ倒すのも快感でしょう。
 しかし、それは稲でした。
 私たちアジア人がもっとも大切にしているものです。
 そんな思いを知らないまま軍隊をいくら送り込んでも、現地の人々の支持を得ることはできません。
 「この戦争、結局はアメリカが負けるだろう」
 私はそう思ったのです。    (212頁)